円周率の計算の歴史(小数点以下の桁数の推移)
円周率(π)は、古代から現在に至るまでさまざまな方法で計算されてきました。
以下に、各時代ごとの数学者と計算方法、そして小数点以下の桁数の推移を明示します。
1. 古代文明(小数点以下0〜2桁)
紀元前2000年頃(約4000年前)
- バビロニア数学(メソポタミア)
→ π ≈ 3.125(小数点以下2桁)- バビロニア人は、円の周長を直径の3倍とし、精密な計算では 3 + 1/8 = 3.125 を採用。
- 古代エジプト(リンド・パピルス, 紀元前1650年)
→ π ≈ 3.1605(小数点以下2桁)- 公式として、(169)2=3.1605\left(\frac{16}{9}\right)^2 = 3.1605(916)2=3.1605 を使用。
2. 古代ギリシャ・ローマ時代(小数点以下3桁)
紀元前250年頃
- アルキメデス(ギリシャ)
→ π ≈ 3.1408 < π < 3.1429(小数点以下3桁)- 内接・外接の正96角形を用いて近似値を求める。
紀元前150年頃
- ヒッパルコス(ギリシャ)
→ π ≈ 3.1416(小数点以下4桁)- 三角法の基礎を築き、円周率の精度を向上。
3. 中世(小数点以下5桁)
5世紀
- インドのアリヤバータ
→ π ≈ 3.1416(小数点以下4桁)- 6283220000=3.1416\frac{62832}{20000} = 3.14162000062832=3.1416 を採用。
5〜6世紀
- 中国の祖沖之(Zu Chongzhi, 429–500年)
→ π ≈ 3.1415926 < π < 3.1415927(小数点以下7桁)- 正24576角形を用い、分数表示 355113\frac{355}{113}113355 で極めて精密に計算。
4. ルネサンス期(小数点以下9桁)
1596年
- ルドルフ・ファン・コーレン(オランダ)
→ π ≈ 3.1415926535(小数点以下9桁)- 正2³¹角形(約21億角形)を用いて計算。
5. 17世紀(無限級数の発見, 小数点以下15桁)
1655年
- ジョン・ウォリス(イギリス)
- ウォリス積(無限積)を発見。
- π=2×21×3×4×43×5×6×65×7×…\pi = \frac{2 \times 2}{1 \times 3} \times \frac{4 \times 4}{3 \times 5} \times \frac{6 \times 6}{5 \times 7} \times …π=1×32×2×3×54×4×5×76×6×…
1668年
- ジェームズ・グレゴリー(スコットランド)
- マクローリン展開の原型 を発見。
- tan−1(x)\tan^{-1}(x)tan−1(x) の級数展開を利用。
1671年
- ゴットフリート・ライプニッツ(ドイツ)
- ライプニッツ級数 を発見:
- π=4×(1−13+15−17+19−…)\pi = 4 \times \left(1 – \frac{1}{3} + \frac{1}{5} – \frac{1}{7} + \frac{1}{9} – … \right)π=4×(1−31+51−71+91−…)
- 1000項計算しても 小数点以下2桁程度 の精度しか得られない。
1706年
- ジョン・マチン(イギリス)
→ π ≈ 3.14159265358979(小数点以下15桁)- マチンの公式 を考案:
- π=16tan−1(15)−4tan−1(1239)\pi = 16 \tan^{-1} \left(\frac{1}{5}\right) – 4 \tan^{-1} \left(\frac{1}{239}\right)π=16tan−1(51)−4tan−1(2391)
- 100桁以上の計算が可能に。
6. 18〜19世紀(小数点以下200桁)
1761年
- ヨハン・ランベルト(ドイツ)
- πが無理数であることを証明。
1794年
- アドリアン=マリ・ルジャンドル(フランス)
- π²が無理数であることを証明。
1841年
- ウィリアム・シャンクス(イギリス)
→ π ≈ 小数点以下707桁計算(ただし、527桁目以降が間違い)
7. 20世紀(小数点以下10万桁以上, コンピュータの登場)
1949年
- ENIAC(世界初の電子計算機) → 小数点以下2037桁 まで計算。
1961年
- IBM 7090 → 100,000桁 まで計算。
1989年
- スーパーカミオカンデ → 1,011,196桁 まで計算。
8. 21世紀(小数点以下兆桁へ)
2009年
- スーパーカミオカンデ → 2兆7000億桁 まで計算。
2021年
- スイスの研究者が 62兆8000億桁を計算。
結論:円周率の計算の進化

円周率の計算は、古代から最新のスーパーコンピュータに至るまで進化を遂げ、小数点以下数兆桁まで求められるようになりました!
コメント